ムショうの



 家に帰ると、めずらしくうのちゃんはいなかった。

 もちろん、お母さんの自動車もない。久しぶりにカギを取り出して、ドアを開けた。

 昼下がり、夕暮れ手前のリビングは、とても静かだった。
 オレンジに染まった床よりも、夜がたちこめた空間よりも、そこはずっとさみしい雰囲気に包まれていた。

 一人だった。家の中、わたし、ひとり。

 二階に駆け上がり、制服を脱ぎ捨てた。シワシワになってしまえと思った。両手ではさんで伸ばしても、取り返しのつかないくらい。

 布団に、顔をしずめた。耳までふさがるくらい、深くしずめた。

 目を閉じる。一番後ろの席から見た、アオイの背中が浮かんで、消えない。ほんの少しの弧を描く、背骨が消えない。

 ショックを受けることじゃない。なのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。


 今日が金曜日でよかった。明日、学校が休みでよかった。