スマッシュを決めてよかったって。ボールを打った自分の右手がキラキラ見えるほど、飛び立つじゅうたんの下に、星を見るように。そう思ったはずなのに。
それだけで、満ち足りたはずなのに。
いったいいつから。
アオイがわたしに、アオイの一部をくれて、わたしも一部を渡して。その瞬間から、損得感情がはたらいてしまった。
はじまってしまった。どちらが多いか、比べること。
男子たちのなかにいるとき。「おはよう」って言ってほしかった。わたしが教室に入ったのを、見てみぬふりしないで。目配せでもいい。みじかいの。ちょっとでいいから、ほしかった。
家に行ったこと。クラスで広まったとき、「ごめん」の言葉がほしかった。気持ちを、考えてほしかった。
放課後、さっき、ついさっきだって。立ち上がって。追いかけてきてほしかった。男子たちの目を気にするんじゃなくて。そっちばかり優先するんじゃなくて。
声をかけてほしい。ちょっとくらい、笑ってほしい。わたしといるときも、バカ笑いしてほしい。キスの前だけ、やさしくしないでほしい。ほしい。ほしい。ほしい。
わたしがあげる分、ほしいんだよ。
わたしのはじめてと、怖いのと、浮き沈む気持ちと、悩む時間のぶん、ちょうだいよ。



