ムショうの


 前奏が流れると、うのちゃんは

「ああコレ!!」

 瞳を輝かせたあと、

「わたしもコレ歌おうと思ってたのにぃー!」

 と頬をむくれさせ、

「ま、全然覚えてないんだけどねー」

 としめくくった。

 なんだソレ。てかうのちゃんしゃべってる間に、もう曲始まっちゃってるし。歌っていないときまで、うのちゃんはうるさい。


 たっぷり三時間以上、時間を気にせず交代で歌ったあと、最後に、ホール・ニュー・ワールドのデュエットをした。

 わたしが言わなくても、うのちゃんが入れてくれていた。
 そういうの、通じてる、みたいで。ちょっと嬉しい。とか、思っちゃってるわたし。にやけそうになる唇が、まがらないように力をこめる。

 車にいるときからさんざん歌っていたせいもあってか、うのちゃんの声は終盤になるにつれて枯れていった。

 ホール・ニュー・ワールドは、とてもダンディーなデュエットになった。

 ーー見せてあげよう 輝く世界
   プリンセス 自由の花を ほら

 ハスキーな男性声で歌ううのちゃんに笑いながら、青空とはまたちがう、澄んだ夜空を想像する。

 ーー素敵すぎて 信じられない
   きらめく星は ダイヤモンドね

 キラキラ、チカチカの中。じゅうたんで風を切る。素肌に当たる風は、きっととても心地よい。

 お姉ちゃんは、元ダンナさんと、歌ったことがあるのだろうか。
 上月さんと歌ったときは、きっとうのちゃんが女パートだったんだよな、当然。

 その光景を想像してみようとしたけれど、現在進行形で流れるうのちゃんの低い声に、ジャマされた。


 上月さんの顔は、よく思い出せなかった。