ムショうの


 独特のリズムは、多分うのちゃんだ。アオイに断って、電話を切る。
 待ちきれなかったのか、うのちゃんがひょっこり、ドアのすき間から顔を出す。

 そして、大げさなくらい口を開いて、しまった!という顔をした。

「あ。もしかして、電話とかしてた?ごめんっ、こまり!!」
「ううん」
「ごめんーっ!!」
「・・・いや、ありがとう」
「なんでありがとう?」

 わたしがあいまいに笑うと、うのちゃんは不思議そうな顔で、どういたしまして、と言った。

 なぜか、花柄のパジャマに合わない、オジサンをまねた低い声色だった。べつにおもしろくない。

「どうしたの?」
「いや・・・うん。べつにね、用事ってわけじゃないんだけど」

 さっきのアオイと、同じようなセリフを言う。
 すこしだけ困った笑顔に変わる。うのちゃんにしては、めずらしい顔。

 うのちゃんは言った。

「・・・一緒に、寝る?」
「え?」

 そんなことを提案されるとは、思わなかった。
 わたしがおどろいた顔をして固まっていると、

「なーんてね」

 ニカッと笑って、ヒラリと。
 顔をひっこめたうのちゃんは、わたしの部屋から出て行った。


 シャンプーの甘い香りだけが、部屋のなかに残っていた。