ムショうの


「・・・もしもし」
「いま、大丈夫?」
「ん、大丈夫だよ」

 ちょうど部屋戻ったとこだし、わたしがそう続けると、アオイはやっといつもの声に戻って、

「おれも、部屋」

 ふわりと言った。漏れた息で、ほころんだ顔が想像できた。

「あ、ごめんね、メール・・・」
「ああ、いや。うん。べつに・・・電話も、用事ってわけじゃねーんだけど」

 電話越し。アオイの声は、クラスで馬鹿笑いするときとは、すこしちがって聞こえる。

「・・・えと。あ、今日貸したCD、聴いた?」

 言われてはじめて、思い出した。帰ってからずっと、カバンのなかに入れっぱなしだ。

「・・・あ、うん!良かったよ、ええっと」

 四曲目が、と言って、とっさに出てしまったウソに、のどの奥がキュウと締まった。
 もし三曲入りだったらどうしよう、と思った。それすら確かめていなかった。

 けれど、たっぷり曲数が入ったアルバム仕様だったらしく、アオイは「四曲目かぁ」とつぶやいた。

「あの、ありがとう。すぐ返すから」
「べつに、いつでもいいって。CDパソコンで取り込むのとか、焼くのとか、あんがい面倒だよな」

 アオイの声はやさしかったけれど、そのあとにすこし、落ちた沈黙に、背中がヒヤリとする。

 窓のすきまから入る風になびく髪は、ドライヤーを当て終わって時間がたっていないせいか、サラサラ、一本一本束になることなく、わたしのほおにふれる。

「・・・あのさ、」

 コン、ココン。アオイの声とかぶさって、ノック音がした。