「あ、ねえ!こまり!!」
うのちゃんが、なにか思いついたように、はじけた声で言った。
「カラオケ行こうよ、カラオケ!!明日明後日、こまり学校休みでしょ?」
「え、うん・・・休み、だけど」
「久しぶりにさぁ!ねっ!!」
土日、どっちがいい?という問いに急かされて、じゃあ明後日、と答えてしまった。
うのちゃんは「じゃあ決まりーっ」とうれしそうに言い、またコップに口をつける。もう数滴くらいしか、お茶は残っていないのに。
まだ、うのちゃんが結婚してなくて、家にいたときは、近所のカラオケによく行っていた。
うのちゃんが十八歳で免許を取ってからは、車で、すこし遠いカラオケ店に行くようになった。自転車で行けるところは、ボロくて音漏れもひどいし、機種も古いやつしか置いてなかったからだ。
二人で行ったときは、必ず、ホール・ニュー・ワールドをデュエットで歌った。
うのちゃんは男パートで、わたしが女。けっこう楽しくて、我ながら上出来で、調子にのって英語バージョンも歌ったことがある。
年上のくせに、わたしより英語がダメなうのちゃんは、ひどいカタコトで。ときどき、「オーウェー」とごまかして歌っていた。
爆笑だった。
うのちゃんと話していたら、メールの返信をすっかり忘れていた。
自分の部屋にもどり、ベッドに腰かける。携帯画面を明るくしたちょうどそのとき、着信が入った。アオイからだ。
電話のほうの着信は、変えそびれていた、数ヶ月前にはやっていた曲。
流れる音楽にちょっとためらったけれど、通話ボタンを押す。
「・・・あっ、もしもし」
アオイの声が耳にひびいた。すこし緊張した、かたい声だった。



