ムショうの


 正面衝突。骨折みたいな、にぶい音。あわてて中身を確認する。アオイから借りたCDは、無事だった。

 ホッと、息をつく。ヒビでも入っていたら、どうしようかと思った。

 ケースに、アオイのものっぽい親指の指紋がひとつ、くっついている。アオイのものっぽい、ていうか、アオイのだろう。

 昼休みの、ちょっと必死な、アオイの顔を思い出した。
 すこし、泣きたくなった。



 家に帰ったら、ぬけがらがあった。

 脱皮したあとの、ぬけがら。うのちゃんの。
 懐かしくなるのと同時に、ため息をつく。そういえば、昔からうのちゃんは、服を脱いでそのままほうっておくからお母さんに叱られていた。

 しかも、今回は大事なスーツだ。シワになっちゃいけないのに。しかたなく、ハンガーにかけて、カーテンレールにつるしておく。

 両手ではさんでたたき、わたしがシワをのばしていると、

「サァッパリしたぁー!」

 スーツの中身が、パジャマ姿でリビングに戻ってきた。

「・・・うのちゃん」
「あーっ!こまり、おかえりぃ!もうお風呂はいっちゃった!夕方だけど!汗びっちょりだったからさぁ~」

 ニカッと笑う。うのちゃんは、バスタオルを頭にグルグルと巻き付けていて、どこかの国の人みたい。

 わたしの視線をたどったのか、うのちゃんはバスタオルを指さして、

「タオルドライちゅう」

 またニカッと、笑って言った。