近所の家の庭に、珍しいものが見えたのだ。飼われている一匹の犬の下に、たくさんの、白く丸いもの。
なんだ、あれ。タマゴ?
目をほそめて、ゆっくりと近づいてみると、タマゴのように見えたものは、生まれたばかりの子犬たちだった。
白くて、小さい。すごく。かわいい。
門のそばに寄って、しゃがみこむ。しゃがんでも、小さな子犬たちの視界に入るのはなかなかむずかしい。
「あら、こまりちゃん。こんにちは」
わたしができるかぎり背骨を丸めていると、家から一人のおばちゃんが出てきた。
回覧板を回すときなんかに会う、近所のおばちゃん。名字よりも、その名称が先に出てくる人。
「こんにちは」
あわてて立ち上がる。わたしのアイサツと同時に、子犬がクゥン、と鳴いた。
「一昨日ね、生まれたところなの。かわいいでしょう」
「あ、はい!」
「もらい手があるといいんだけどねぇ」
おばちゃんは、わたしと入れ違いにしゃがんで、母犬のあたまをなでる。
クウン。子犬よりも、しっかりした鳴き声。
おばちゃんの言葉を、頭のなかで繰り返す。もらい手があるといいんだけどねぇ。
そうか。そうだよな。こんなにたくさん生まれたんだもの、全部が全部、お母さんのところにはいられないんだね。
「もし知り合いにいたら、声かけてみます」
社交辞令のようにそう言って、ペコリと頭を下げる。走り去るときに、思いっきりカバンを電柱に当ててしまった。



