ムショうの


 わたしとは逆方向、駅の方へかけていくうのちゃん。タイトスカートの、お尻がキツそう。酸素不足で、皮膚がおぼれてしまいそう。

 空気がタップリ入るすき間があるプリーツスカートをなでつけて、わたしは自転車にまたがる。そして、ペダルに力をこめた。


 今日は、木曜日。一週間の、折り返し。



 すこし早く家を出たのに、学校には、いつも通りの時間についた。

 いつも通り。
 なのに、教室に踏み込んでみればいつもとは違って、わたしはあっという間にクラスメート数人に囲まれてしまった。

 なにごとか、と目を丸くするわたしに、おはようをすっとばして、友人のサユキが言う。

 サユキの、ただでさえ大きく、よく通る性質の声が、教室中にひびいた。

「こまりぃ~っ!聞いたよっ!!」
「え、なにを?」

 興味深々の目が、たくさんのギラギラを、わたしにそそぐ。そして、その下に続くくちびるが、おどろくような言葉をはいた。

「昨日っ!!家行ったんだってね」

 イエ。

 その二文字に、一瞬頭が真っ白になって、え、何って、思って。そしてじわじわ、数秒ごとに赤く染まっていく気がした。

 昨日。家。わたしが、アオイの家に行ったこと。

 ・・・なんで。
 なんでそのこと、みんなが知ってるの。

 教室内を見渡す。まるで教室自体が、ニヤついているように見える。

 かぁっと、おなかの底から熱いものがこみ上げた。一気に、目が冴えた。頭のてっぺんまで、血がまわる。