私は息を切らしながら廊下を走り、ようやく中庭にたどり着いた。


人が全くいない中庭。

休憩するには意外と穴場スポットなのかも。

太陽の日差しもポカポカしていて気持ちいいし……。

なんて、神楽 恭介とこの状況で、そんなことを思えるのは呑気な私。


ふう、と深呼吸をして心を落ち着かせる。

まるで光合成しているかのように、全身に日光を浴びて……。



「ここまで連れてきて、なんの用だ」



気づけば私は、彼の手首を掴んだまま光合成をしていた。

慌てて手を離すと、彼はその手首をぐるりと回す。

強く握りしめすぎちゃったかな。

ごめんなさい。

と、心の中で思いながらも、先ほどまで感じていた恐怖心はどこかへ消えているのが分かった。


なんでだろう。

光合成したからかな。


私は穏やかな気持ちで中庭に設置してある自販機に向かう。