その1
ケイコ



多美がやられた…

下校途中、5人組の男女に囲まれ連行された多美は、左足首のあたりをバーナーで焼かれたということだ

祥子から入院の知らせを受け、私はアキラの後ろに乗っかって、相模浦南病院に向かったわ

「じゃあ、オレはここで待ってるよ」

「うん!じゃあ…、行ってくる」

アキラには1階のロビーで待ってもらうことにした


...


3階の病室の前には、アカネと1年の理沙が立っていた

「あっ、おけい⁉…来てくれたんだ!」

「ああ…。多美は⁉大丈夫なの!」

「うん、やけどの具合は思ったより重度が低いみたいでさ。あと、頭に何針か縫って…。今、先生が診察してるから、終わったら会ってやってよ」

「わかった。で、祥子は?」

「中にいる。あの人、ずっとつきっきりだよ。診察にも立ち会うって、家族の人に頼んでさ…」

「そう…、祥子が…」


...



祥子の話では、排赤一派の手によるものだろうということだが、手口からすると、直接の犯行は愚連隊系ではないかと…

アカネたちから聞いたところは、その程度だった

まあ、まずは多美から詳しい話を聞かないことには…

しばらくして、病室から先生が出てきて、入れ替わりに私たちが中へ入った

「おお、おけい‼来てくれたのか…。多美、おけいだぞ!」

「多美…!大丈夫か…?」

「ああ、おけい、たいしたことないさ。お前、仕事はいいのか?」

多美はことのほか元気だった

そのあと、家族の人は気を利かせてくれ、外してくれた

「私たちも外そう」

アカネも理沙を連れ立って室外に出て、病室内には祥子と私、多美の3人になった

私と祥子は、多美からことの状況を大まかに聞いた


...



多美は冷静に話してくれたよ

どうやら、相手は、勢力割譲の話し合いを持ちかけてきたらしい

「ふん、4人で路地裏に連れ込んで、そしたらもう一人がガスバーナー持っててさ、話し合いもクソもあるもんか!要は、脅しだよ。当然突っぱねたら、さすがに多勢に無勢で、このザマだったわ」

「とにかく、無理しないできちっと治してよう、留守の間は私がちゃんと仕切るからさ。多美は心配しないでいい」

「祥子、私の不注意ですまない。早く退院して、復帰するから、その間、頼む…」

多美と祥子は、すっかり通じ合う仲になっているようだ

麻衣と私の時代のような対立はなく、ほんと1本にまとまってる

偉いよ、二人とも…