その3
NGなきワルの歪んだ進撃❶



あの時…。
そう…、大打ノボルは今、モブスターズの仲間たち3人を目の前にして、”そのこと”を思いだしていたのだ…。

”椎名とタカハシは、ジャッカル・ニャンへ2度めの殴り込みを宣言した麻衣とオレが接触することに反対した。それは意思表示というよりも、オレへの訴えだったのだろう。それをはっきり悟った…”


...


「…この際、お前らには言っとく。オレは天才マンウォッチャー、タカハシから本郷麻衣を筆頭とした、この地の猛る女たちの実態・実情を散々教授された。オレだけでなく、ここにいる4人も、なぜ日本を代表するヤクザの親分である坂内さんが、あんなションベン娘どもの命までって疑問をよう、都県境の地に通う間に理解できたはずだ。…今回のスクラッププール決戦を見てみろ。あのバグジーとも、高校に通うツナミとかって規格外れの体躯を持った女がだ、性別を超えてほぼ五分で戦いやがった。それで、バグジーの心をも奪った…。ハンパじゃあねえって、あの女ども‼…だろうが?」

3人は確かに頷いていたし、ノボルの言に異論はなかった。
だが、しかし…、ではあったのだった。

「…そしてオレたちの前にはだかる、メインの女があらわになったさ。それは、本郷麻衣だとな。その麻衣は今や、相和会の有力幹部との婚約を公表し、事実上、組内部の人間になった。その上で、オレたちと坂内さんとのラインを周知し、面と向かってケンカを売ってきてるんだよ!」

この時、他の3人の目に写った熱弁するノボルへは、同じ思いが胸に去来していただろう。

”麻衣を語る目は、旧来の大打ノボルではない…”と…。


...


「…西城がこっちと通じてることも、ガキのコネクションルートで旧建田組の間宮にオレ達が毒を嗅がせたこともキャッチしてるんだ、先方は。だが、麻衣のスタンスは相和会の意図を背負ってって立場も、都県境のガキ勢力側とツルんだって立場、そのいずれもヤツは態度に示していない。フン…、ヤツはすべて計算づくで、この大打グループに挑戦してきてるんだって‼」

麻衣を語るノボル…。

それは、”他を”忘れた、いや、放り投げたチーム大打のリーダーの姿に他ならない…。
それはもはや、この場で彼の言葉に耳を傾ける3人の共通認識に至っていたのだ。

「…いいか、ヤツと僕殺男の婚約披露のセレモニーが終われば、本郷麻衣は間違いなく相和会を巡る東西両大手にとってキーパーソンになる。その前に、麻衣のこっちへ挑む”立場”をこのオレが確かめない訳にはいかない。そういうことさ」

ここでノボルは大きく息をつき、手にしたタバコに火を燈した。