あれからかなり時間が経過。

真っ暗な空に、星々が疎らに散らばっている。

月は白くて丸く、辺りを照らすスポットライトのような存在。


もうすぐで着く頃合い。


「すごいですね!!本物、初めて見ました」



ヘリコプターの窓に映る真っ黒な海の上。

大きな船が漂っていた。

キラキラと好奇心の目を輝かせながら、期待を膨らませて眺める。



輪郭だけを見れば平らな屋根に覆われており、その下にはたくさんのヘリコプター。

全長はシロナガスクジラくらいあるんじゃないかっていうほど大きく、船は綺麗で清潔な環境を保っているように思えた。



「今のうちだな、そんな気持ちも。たくさん船の中を知っちまったら、嫌でも帰りたくなるぞ。最近辞めた奴が二人いるんでな」

(そりゃそうか……囚人がいっぱいいるんだもんね)





彼の話によれば、この船には手のつけられない凶悪犯がたくさん収容されているらしい。

死刑になるほど悪いことをした人ばかりで、死刑制度を廃止したこの世界では船に監禁して監視しているという。



また看守は最悪殺しても構わないが、殺したことは世間に流すことができない。

そのため、お金のない奴は片っ端に潰されてやりたい放題という状態となっていた。

お金を所持している囚人に有利ってわけだ。

なんという不公平。

僕ならお金ではなく、更生できるかできないかで決めそうだ。



着地したヘリコプターから降りて、僕たちは監視室へ向かった。

歩いている最中、設計図が書かれてある船を見せられる。



記憶力の高い自分にとって覚えるのは簡単。

一番下に牢屋があって、その上には監視室や看守の部屋などがあり昼食を食べられる場所やエレベーターもあるようだ。

ちなみに万が一のために、出口も確保されている。

これはいざと言うときに使用する通路だ。

覚えておこう。