アルフレッド・ブレイディに親はいない。物心ついた頃から、アルフレッドはニューヨークにある孤児院にいた。

親と手を繋いで歩く子どもを見るのは、正直羨ましさと嫉妬でいっぱいになった。自分にも帰る家がほしい、家族がほしい、そう思っていたアルフレッドに転機が訪れたのは十歳の頃である。

「僕たち、不妊治療を頑張ったけど子どもができなかったんだ」

「私たちのこと、本当のパパとママと思って甘えてね」

不妊治療をしても子どもを授からなかった夫婦が、アルフレッドのことを引き取ったのだ。帰る家ができ、優しい両親ができ、三人でご飯を食べ、休日は遊びに連れて行ってもらえる。アルフレッドにとって幸せそのものだった。十二歳になるまでは……。

十二歳にアルフレッドがなった時、両親の間に子どもができたのだ。それ以降、アルフレッドは冷たい態度を取られるようになっていった。

部活の大会に応援に来てくれなくなり、テストでいい成績を取っても褒められることがなくなり、プレゼントも貰えなくなった。アルフレッドに注がれていた愛情は、もう一ミリも残されていなかった。