「今回は運良く助かったけど、発見が遅れたら最悪の事態は免れないからな……」

アルフレッドの言葉が、救急科の空気をさらに重くしてしまう。だが、その言葉は決して嘘でも推測でもない。医療は全ての人をどんな状況からも救える魔法ではないのだ。

「あの両親、自分の子どもの成績しか見ていないように感じます。あの態度ではーーー」

一花が言葉を濁す。言いたいことはきっと全員に伝わっているだろう。目に見えない心の傷を放っておくということは、自傷行為を深めてしまう原因になりかねない。

一花の予想は正しかった。数日後、またオーバードーズによって詩織は搬送されてきたのである。