Cherry Blossoms〜難解なカルテ〜

「ごめんな、家の電話に誰も出てくれないんだ。お父さんやお母さんのスマホの電話番号って知ってるかな？」

ヨハンの言葉に詩織は一瞬悲しそうな顔を見せる。だが、その顔はすぐに無表情に変わり、淡々とした口調でスマホの電話番号を教えてくれた。

「ありがとう。すぐに連絡するからな！」

ヨハンはそう言い、電話をかけるために再び走って行く。その後ろ姿を桜士が見送っていると、一花が詩織に話しかけていた。

「藁科さん、こんにちは」

だが、詩織は一花とは目を合わせようとせず、言葉も無視している。だが、一花は気にする様子を見せずに問いかけた。

「藁科さんは、最近よく薬を飲んでしまうの？」

問いかけたものの、詩織は無言のまま体を横に向けてしまう。隣にいた昴が慌てた様子で謝った。

「す、すみません！えっと、詩織はまだ少し混乱しているのかもしれないです。そっとしておいてくれませんか？」

昴はそう言うものの、オーバードーズで搬送されてきた人は処置をすれば終わりというわけではない。桜士が口を開く。