Cherry Blossoms〜難解なカルテ〜

アルフレッドが言い、桜士と一花は顔を見合わせる。詩織は今、危険な状態なのだ。

「オーバードーズか!」

ヨハンも目を見開き、一花が「すぐに胃洗浄の準備を!」と看護師に指示を出す。救急科は一瞬にして緊張に包まれた。

オーバードーズとは、市販で売られている風邪薬などを過剰摂取をすることである。精神的苦痛から逃れるためにオーバードーズに手を出してしまう人が多い。

彼らが飲むのは市販薬だが、その市販薬の中には覚醒剤や麻薬のような作用を生じる成分が含まれているものがあり、決められた用法・用量を守らなければ、急性中毒を起こして命を落としてしまったり、内臓に重い障害が起きてしまうことがある。

オーバードーズを続けてしまうと、依存症に陥り、薬なしでは生きられない体になってしまうことも少なくない。

「一、ニ、三!」

グッタリとしている詩織をストレッチャーから処置をするためのベッドへ移動させ、血中に移行した薬剤の排泄をするため輸液を投与する。その際、一花が服の袖を捲ったところ、手首にはリストカットの痕がいくつもあった。だが、今は驚いている暇などない。

胃の中に残っている薬を吸引するため、胃管を詩織に桜士は挿入していく。