「それなら道も混んでませんし、1番にゴールできるかも知れませんね!」
「とりあえず、初が1人で仰いでみて」
さっきまで2人で仰いでいた風船が、わたしだけの力でふよふよと浮く。
「よし、いけそうだな。そのまま俺が下につくまで落とさないで」
「はい!絶対に落としません」
わたしが力強く返事をすると、紺くんは外階段を使って1階へと走り出した。
大切な風船を紺くんはわたしに預けてくれた。
今もきっと、わたしを信じて一生懸命走ってくれている。
この風船は絶対、落としたくない。
落とせない。
そんな気持ちで仰いでいると、下から「初ー!!」と叫ぶ声が聞こえた。
風船を落とさないよう慎重に窓へと近づく。
そこで目に入ったのは下で大きく手を振る紺くんの姿。
わたしは「いきますよ!」と声をかけると、風船を窓の外へと仰いだ。
それがどうやって落ちていくのかを確認する前に、紺くんと同じルートを使って1階へと下りる。
大丈夫、紺くんは絶対に風船を落とさない。



