「そうすれば、玲に少しでも幸せを与えることができたかもしれないし、雫ちゃんにこんな想いだってさせずに済んだのに……」
「そんなことはないですよ」
わたしは、首を横に振った。黒くて長い髪の毛が、シャラシャラと揺れる。
「玲のお母さんが代わりに亡くなってしまうことだって、悲しいことに変わりはありません。きっと、玲だってお母さんの命を自分の苦しみと交換したかったなんて思っていなかったと思いますよ」
誰よりも優しい玲だから、自分より他人を優先する玲だから、間違いない。
「もちろん、玲には生きていてほしかった……。今でも好きです……。すごく、大好きです」
「玲のこと、まだ大事に想っていてくれたのね……。とっても嬉しい……!」
そう言う玲のお母さんの目頭には、涙が光っていた。
「でもね……。だからって、自分を縛り付けないでほしいわ」



