お風呂上り“あいつ”とやらのスウェットを借りた。

肌になじむ着心地とすでに何回も洗った形跡があるのを見て、何度もここで寝泊まりしてる人のものだと思った。

そんな人のものを勝手に着るのは抵抗があったけど、サイズはぴったりで着やすかった。

「夏、ベッド使っていいから」

「え、山田…さんはどうするんですか?」

「床で寝る」

「それは冷たくないですか!?」

クッションを並べてその上に寝ようとしてるのはわかるけど、それでもそのまんまのフローリングじゃ寒すぎる。

1人暮らしの山田の家には他に布団がないらしい。

だとしたらこのスエットの主はどこで寝てるの?
なんて野蛮な質問、さすがに言えるわけない。

「じゃあ…一緒に寝る?」

「は!?」

変な声出しちゃった。
ビクッてなって明らかに動揺を見せちゃった。

「嘘だよ、いっぱい着込んで寝るから大丈夫だって!俺明日も仕事だから、おやすみ!」

ニカッと笑った山田はクッションの上に横たわり、ダウンを着てさらに布団を被った。

「………。」

確かに見た目は温かそうだけど…

「電気消すよ」

「は、あ、はいっ」


大丈夫なの…?


てゆーか私のが大丈夫なの!?

これって事件性とかない!?

山田と言えど、あっちからしたら知らない女子高生だよ!?


冷静になったら危ない気がして来た!


女子高生連れ込んでるって…


静かに電気が消される。

ぴったりと壁にくっ付くようにできるだけ隅っこに寄ってベッドの中に潜った。


ドキドキする、どうしよう。

急に手の汗が止まらない。


何も、起きないよね?

本当に大丈夫なのかな?

私どうかなっちゃったりしないかな!?


男の人と2人きりの夜とか初めてなんだけど…!


ドッ、ドッ、と心臓の音がうるさい。

かすかに震える手を祈るように握った。


早く朝になって、夜が明けて…っ


緊張して全く寝られ…







た、朝。


いい匂いが充満する部屋でのお目覚めだった。

「おはよう、夏。よく寝られ…たなその顔は」

「はい、おかげさまで…」

ぐっすりだった。

昨日の疲れも吹っ飛ぶぐらい体も軽かった。

何も起こらなかったわ、夜。

逆に意識しすぎて恥ずかしい。

意識してんの私だけとか恥ずかしすぎる。

すでに起きていた山田が朝ごはんを作ってくれていた。

目玉焼きとハム、トースト…
朝からキッチリしていて疑ってた自分がまた恥ずかしくなった。