「お名前はなんていうのかしら?」

「天狼絆那です。」

「あら~、名前までかっこいいのね~。それに、しっかりしてそう。あなたになら和凜を任せられるわっ!」

「そう言っていただけて、とても光栄です。」

「お、お母さんっ……も、もう私行くからねっ……!」

 流石にお母さんのお喋りが過ぎる気がしたから、慌てて遮る。

 一刻でも早くこの場から離れたくて、無我夢中になる。

 だからか、無意識に絆那さんの手を握っていた。

「……っ。」

「……へぇ~、あらあら~。」

 もう、お母さんったらっ……!

 心の中でむくれていた私は、気付く事なかった。

 顔を真っ赤にしている絆那さんと、それを見ているお母さんが楽し気に微笑んでいるのを。



 しばらく歩いて、やっと学校が視界に入る。

 はぁ……とりあえず、これで良いかな。

 さっきの出来事を払拭するように首を左右に振り、校門を通ろうとする。

 でも、安心したからか今の現状に気付く事ができた。

「き、絆那さんごめんなさいっ……! 無我夢中だったもので、つい無意識に……!」