「俺のことを、名前で……呼んでくれ。」

「……ふぇっ?」

 案の定、何を言っているのか分からないといった様子の和凜。

 俺だって、こんなに強引に迫る事は今までになかったから自分自身に混乱している。

 それでも……独占欲は止まりそうになかった。

 名前で呼んでほしい。もっと和凜の近しい存在になりたい。

 夢のまた夢の事だが、こうする他なかった。

「……嫌なら、良いんだが。」

 なけなしの理性を保って、小さな声でそう言う。

 どの選択が正しいのか、間違っているのかなんて分からない。

 俺は焦っているんだ。誰かに和凜が取られないかと。

 ……そんな命知らずが現れるとは、思っていないが。

 ただ強要する事だけは決してしたくなくて、和凜に委ねる。

「え……っと……。」

 言いにくそうに視線を逸らして声を洩らした和凜に、自分の未熟さを真摯に感じる。

 やはり、こんなすぐ言わなければよかった。きっと、警戒されている。

 こんなにぐいぐい来る男、和凜は嫌いだっただろうか。

 ……当たり前、か。