独占欲強めの最強総長、溺愛は盲目なほど。

 ……和凜、か。

 女の口から織りなされた名前を、心の中で反芻させる。

 こいつに似合ってて、優しい名前。

 そう思いながらも俺は、自分の名前をごく自然に口に出していた。

 どうして俺は、こう易々と見ず知らずの女に名乗っているんだ。

 いつもは絶対と言っていいほど、こんな事はしない。面倒だから。

 でも今の俺は、完全にこいつ……和凜に気を許していた。

「俺は……天狼絆那。別に覚えなくてもいい。」

 ……ん?

 俺が名前を言った瞬間、こいつは動きを止めた気がした。

 ほんの一瞬出来事だったからどうとかは言えないが、つい疑問に思う。

 だがすぐに我に返ったように、慌てて踵を返した。

「本当に助けてくれて、ありがとうございました! では、失礼しま――」

「一人で、帰るのか?」

 言葉に被せるように、口からついて出た言葉が聞こえる。

 どうして自分からこう言っているのか、俺としても不思議だ。

 だけれど……こいつを一人で帰らせる事が、直感で嫌だと感じた。

「えっ……?」