“最強総長”

 そう謳われている俺の荷は、重すぎる。

 喧嘩が強いという理由だけで総長にされ、うんざりしている。

 俺は、喧嘩の世界に足を踏み入れるつもりなんかなかった。

 きっかけなんか、ほんの些細な事。

 見るからに頭の悪そうな奴に喧嘩を吹っ掛けられて、面倒だから秒で終わらせる。

 それを繰り返していく内に、“孤高の天狼”だなんて言われるようになった。

 だっさ……と思いつつ、言うのも面倒。

 そう思って放置していたら……いつの間にか族のトップに立っていた。

 総長なんて面倒な肩書き、要らない。

 有名になりたいわけでもないし、喧嘩で無双したいわけでもない。

 ……あの日までは、そう思っていた。



「は、離してくださいっ!」

「そんな拒否らないでよ。別に君の嫌な事強要してるわけじゃないでしょ?」

 ある日、いつもの如く適当にふらついていた時。

 前方から何やら揉め事が起きているようで、一人の女に二人の男が群がっている。

 ……何でこんな、人様の迷惑になるようなとこで揉めてんだ。