その時、背後からドンッ……という鈍い音が聞こえた。

 もしかして……そう思って、朝食を並べる手を止めて急いで音のほうへと向かう。

 そこは階段がある場所で、その下には……。

「お、お母さんっ……! 大丈夫っ!?」

「……うぅっ、またこけちゃったわ……。」

 階段の一番下でうずくまっているのは、痛そうに顔を歪めて額を撫でているお母さん。

 私は急いで、お母さんの額に傷がないかを確認した。

 ……よ、良かった。怪我はないみたい。

 ほっと安堵の息を吐くも、お母さんがこけた事実は変わりない。

「お母さん、痛いところとかない? 打ったところとか、擦ったところとか……」

「だ、大丈夫……。ごめんね和凜、朝から心配かけて。お母さん、ドジすぎるわよね……。」

 あはは、と苦笑いを浮かべたお母さん。

 そんなお母さんに、私は口早にこう言った。

「そ、そんな事ないよっ……! お母さん、まだ疲れ取れてないでしょ? たまにはお仕事休んでも、誰も何も言わないよ?」

 お母さんは確かにドジだったり、おっちょこちょいだったりするけど……普段はこんなに頻発しないって、私知ってるもん。