蹴破られた扉は、もうほとんど原型が残っていなかった。

 き、絆那さん強いっ……。

 強いのは知っていたけど、ここまでとは思ってなくてぽかんとしてしまう。

「おい時雨、和凜に何もしてないだろうな?」

「……自分で確認したらどうだ? 好きな女なんだろう?」

「分かってる。それと……後で一発、殴らせろ。」

「はいはい。」

 ドスが利いている絆那さんの声と、軽くあしらっている会長の声が聞こえる。

 お、温度差が凄い……。

 苦笑いしか零せない状況で、私は一人置いてけぼりにされる。

 その時、ふわっと温かい体温が私を包んだ。

「和凜……っ、怪我してないか!?」

「だ、大丈夫です……。」

 焦っている様子で尋ねてくる絆那さんは、今にも泣いてしまいそうなくらい表情が崩れている。

 ……でも、ごめんなさい。私は絆那さんに抱きしめられる資格なんて、ありません。

「絆那さん……離してください。」

「どうしてだ。」

 ぐっと、強引に視線を合わせられてしまう。

 視線を逸らそうにも、熱っぽい瞳が私を捉えて離さない。