「和凜? ぼーっとしてどうした?」

「あっ、いえっ……何でも、ありません……。」

「そうか? 何だか顔色が悪いような気がするが……。」

 何でもないわけ、ないだろ……。

 何でもないのならどうして、そんな泣きそうな顔してるんだ。

 どうしてそんな、今にも壊れてしまいそうな雰囲気を醸し出しているんだ。

 悶々とその事ばかりを考え、気付けば屋上についていた。

 とりあえず和凜をベンチに座らせ、話し始めるのを待つ。

 何か言いたそうにしているが、全然言い出そうとしない。

 ……言いにくい事でも、あるのか?

 和凜はいつも遠慮して、思っている事をすぐには言ってくれない。

 俺の前では気にするなと言いたいのに、今はそれができなかった。

 何を考えているんだ、和凜は。

 何を思って、今から何をしようとしているんだ。

 ……嫌な予感ばかりが、する。

 そう思った、矢先だった。

「あの、絆那さん。」

「ん? どうしたんだ?」

 衝撃的な言葉が、聞こえたのは。

「しばらく……私に関わらないでください。」