あんなに走ったら、こけちゃいそう……。

 でも、美月ちゃんは運動神経が凄く良いから、心配するまでもないよね。

 ……私に、長けてるところってあるのかな。

 美月ちゃんといると時々、羨ましいって思う。

 たくさんの舎弟さんに慕われて、レディースの総長で。

 性格も容姿も何もかもが良い美月ちゃんが、どうして私と一緒にいてくれるかが不思議で仕方ない。

 だけど直接聞くのは恥ずかしすぎるから、心の中だけに留めておく。

 ……私も帰ろうっと。

 この学校は部活強制じゃないから、入っていない私は帰路につこうと教室を出る。

 その時、近くからこう呼び止められた。

「あっ、咲城さんっ……!」

「えっ……って、先生? どうされたんですか?」

 私を呼び止めたのは、担任の先生だった。

 何やら切羽詰まった状況そうで、深刻な表情を浮かべている先生。

 何があったんだろう……?

 純粋に不思議に思い、先生に尋ねる。

 すると先生は、申し訳なさそうに眉の端を下げた。

「少しだけ、お手伝いしてくれないかしら……?」