和凜にそんな顔、そんな泣きそうな顔させたいわけじゃないんだ。

 気にしないでくれ、と言っても和凜は気にするんだろうな。

 ……心が綺麗だから。

「ただ考え事してただけだから、気にしないで――っ!」

「絆那さんは、情けなくなんかないですっ……! それに、気にしないでって言われたら私は気にしちゃいます……!」

「……か、りん。」

「絆那さんはかっこよくて素敵で、とっても優しい人です……! なので、もう情けないとか、自分を下に見るようなことは絶対言わないでください……っ。」

 ぎゅっと、弱い力で両手を握られる。

 本当にこんな奴に気を許して、ここまでする奴なんて……和凜しかいない。

 俺が言えた事じゃないが……こんな簡単に心を許すな。

 ……男には、特に。

 すっと、和凜の頬に伝う雫を取り払う。

 視線を合わせるように、優しい力で和凜の目線を上げた。

 その表情は……今にも崩れそうな、頑張って我慢しているようなぎこちない笑みだった。

 だが、和凜は震える唇で精一杯といった様子の笑顔を作った。