大晦日にあれだけ遅くまで起きていたのに、私は新年早々からバタバタしてしまう。

「まぁ、正月の朝からこれじゃ今年1年も思いやられるな」

「仕方ないのよ。女の子は準備が大変なんだから」

 両親のそんな声が聞こえてくる。

「まさか、のぞみがこれを着られるようになるなんてね……」

 事前に言われたように髪の毛をセットして、お母さんの前に立った。

「胸も大きくないから巻かなくていいし……」

「それって、どうせ私はちっちゃいよ!」

「でも、海斗くんはそんなのぞみがいいって言ってくれているんでしょ? こんなに長く続くなんてね。このまま続けばいいわね」

「うん……」

 約束のお昼すぎ、うちのインターホンが鳴った。

「じゃあ、行ってくるね。すぐ帰ってくるから」

「海斗くんも病み上がりだし、寒くなったらいくら厚着していても冷えるから、そこそこで帰ってらっしゃい」

「うん」

 玄関の扉を開けた瞬間、海斗の顔が驚いていた。

「あけおめ。今年もよろしくね」

「あ、あぁ。こっちこそ……のぞみ……」

 そりゃそうだよね。今日着物を着るなんて事前には一言も言ってなかったもん。

 お母さんのお下がりだけど、海斗への私の気持ちを何とか表現したかった……。

「早く行こう? 私も着慣れてるわけじゃないから、着崩れしちゃう前に?」

 初詣と言っても、小さい頃からよく境内で遊んでいた神社。いつもはそんな感じだけど、三が日は屋台が出たりちょっとしたお祭り気分も味わえる。

 草履の足元だから、いつものように走り出したりはできない。海斗は足並みを私に揃えてくれていた。

「驚かせすぎちゃったかな……。似合わないかな……」

「驚いたのはマジだけど……、でもこのために? このあとの予定はなんにもないんだぜ?」

「うん。いつかやってみたかったんだ……」

「そっか……。もう七五三には見えないな。大きくなったよな。のぞみも……」

 参道で順番を待っている間、私の手を握ってくれた。それが彼なりの答えだって分かってる。

 お賽銭を納めて、二人並んで手を合わせてからおみくじを引いてみる。

「キビシー!」

 お互いに海斗が小吉で私が末吉だもん。まだ凶じゃなかっただけよかったか……。

「まぁいっか。どっちかだけ大吉なんか出たらへこむしさ」

「うん。ちゃんとやりなさいってことだよね」

「羨ましい。のぞみのポジティブシンキング」


 去年まではこのあとに屋台で色々食べたり遊んで帰ったけれど……。

「着物汚すわけにいかないからさ」

 今年はそれはなし。その代わり、二人でお揃いのお守りを買って、絵馬には二人で受験を頑張ることを書いて納めたんだ。