「ごめんなさい……。海斗の怪我、私のせいなんだよね。だから、私が最後まで面倒みるから……」

「のぞみ……」

 否定をしない海斗。やっぱり、佳英ちゃんの話はまだ余計な情報がつく前に教えてくれた速報だったんだ。

「あのね、大河先輩から呼ばれたのは、部活の予算とか活動計画の話で、本当にそれだけ。場所が悪かったよね。私のミスだよ……。海斗にこんな大怪我させちゃったんだもん……」

 自然と涙が溢れてきちゃう。いつも私を庇ってくれた人に私のミスで怪我をさせてしまった。本当に自己嫌悪しか出てこなくて……。

「じゃ……、のぞみは大河先輩から告白されたとかじゃなかったんだ……」

「だって、みんな知ってるもん。私には海斗がいるから迂闊に手出しできないって」

 泣き顔だったかもしれないけれど、私は答える。

「そんなこと言われてんのか?」

 そう。私に告白するなら海斗と別の高校に進んでからじゃないと無理だといつも言われているからね。

「うん。でもね、私はそれは正確には違う。私は高校でもきっとOKはしない。海斗がいなくなったら私、寂しいよ。でも、高校の進路はきっと分かれちゃうと思うし……。私たちもあと1年かなって、そう不安に思うときもあって……」

「のぞみ……、こっち来てくれる?」

「うん?」

 海斗はハンカチで私の顔を拭いてくれた。

「よかった……」

「えっ……?」

「のぞみがまだフリーだってことに安心した。それなら、俺にまだチャンスあるよね?」

 チャンスって、これまであまりそんなことを考えたことはないけれど、教室で女子の恋バナになったときにはよく出てくるキーワードだよね。

「じゃぁ、俺が言ってもいい? 少し早いかもしれないけどさ」

「うん」

「のぞみ……、のぞみが好きなんだ。だから、誰にも取られたくなくて。のぞみの性格を一番知ってるのは俺のはずなのに。それを信じられなかった自分が悪いから、こんな怪我したんだよな……」

「もぉ、心配させないでよ……。私だって海斗のこと狙っている女子いっぱいいるの知っていたんだから」

 噂話から結構真面目に私たちの関係を聞かれたこともあったから、私の中にいつか海斗が取られてしまうかもしれないという恐怖が少しずつ大きくなっていたのは嘘じゃない。

「中2でこんなこと言うのは早いかもしれないけどさ、のぞみとこれからもずっといっしょにいたいんだ」

「うん、私も……。指切りしよ? ずっと一緒だって」

「俺たち、ガキの頃から変わらないもんな」

「うん。海斗だって私が告白されて断ってきたシーン何度も見てきたんでしょ? バレてないと思ってもちゃんと知ってるよ?」

「なんだ、バレてたんか」

お互いの小指を絡ませたまま、私たちのお互いに笑顔が戻ってきた。