「えっ? それじゃ、大事を取って1週間は外出なしだよね」

「そういうことになるな……。今年は年末も年始もなくなったようなもんだよ」

 電話の向こうで、ため息とともに外出もままならなくなったことへの落胆の様子が伝わってくる。

「そっか……。でも、学校の欠席にはならないからよかったね」

「まぁね。それだけが救いっていうのかな」

「熱はどう? まだ高い感じ?」

「薬飲んでるから、そんなに高くないんだけど、やっぱり関節はあちこち痛いかな。これぞインフルエンザだって感じだよ。さすが保健委員だな」

「そっか。でも、声は元気そうで良かった。長話ししてると休めないからこの辺にしとくね」

 スマートフォンの終話アイコンをタップして、ベッドの上に寝転ぶ。


「うーん、これじゃ年末とか年越しって気分にもなれないよね」

 電話の相手は、私、大峰(おおみね)のぞみの幼馴染で今ではすっかり彼氏として定着している木村(きむら)海斗(かいと)

 元々、お互いに小学校に入学するタイミングで同じ新興住宅街の斜向いに引っ越してきた両方の家族。

 幼稚園までに仲良くなった子と離れてしまって、少しふさぎ込んでしまっていた私の家に、同い年の海斗は毎日のように顔を出してくれた。

 子ども同士が繋がってしまえば早い。家も道を渡れば斜め向かいだから、両家の親もすぐに馴染んで、私たちがふたりで遊びに行くだけでなく、双方の家にお邪魔することも「お互い様」ということで自然になっていた。

 そんな私たちだから、学校が終わったあとも一緒にいることが多かった。

 少しずつ高学年になって、男女を意識するようになっても、それは変わらなくて。

 雨が降って外で遊べない時はお互いの家に行き来してゲームもしていたし。

 何より、私たちが一緒にいることをからかってくる周囲に海斗は男女問わず容赦しなかった。

 『じゃぁ、これまでもこれからも異性とは付き合わないってことだな!?』

 そう言ってしまえば、年齢が上がるほど相手は黙らざるを得なくなる。

 中学生にもなれば、経験がなくても色恋沙汰の話題は飛び交う。その質問に拒否をすれば、自分の番が来たときに答えられなくなるからね……。

『のぞみって、木村くんと付き合ってるの?』

 そう聞かれたのもしょっちゅうだったよ。

 私たちの場合、恋バナはもちろん、好き嫌いが出てくる前から一緒に遊んでいたのと、結局はウマがあったというのが正しいんだろうね。

 だから、中学までは地元の公立校に進学だったから何も変わらなかったけれど、高校となると受験が待ち構えている。

 中学から部活でサッカーを始めた海斗と私たちも、そこまでかなと思っていたんだ。