「わっ!」

珊瑚が驚いて顔を上げると、そこには莉生が立っていた。その手にはココアの入った缶が二つ握られている。

「これ、あげる。お疲れ様」

「あ、ありがとう」

緊張しながらココアを受け取り、口をつける。優しい甘さが口の中に広がっていった。

しばらく何も話すことがないまま、ただボウッと屋上から楽しそうにする生徒たちを見ていた。だが不意に莉生が口を開く。

「綺麗だったよ、珊瑚ちゃん。本当のお姫様みたいだった」

また褒められ、胸の内をくすぐられるような感覚に珊瑚は頰を赤く染める。それと同時に胸が高鳴った。

「ありがとう。まさか、ドレスが似合うとは私もみんなも思ってなかった」

珊瑚がそう言うと、フェンスを握っていた片手に莉生の手が重なる。珊瑚が触れられた手をジッと見ていると、莉生がゆっくりと口を開く。

「どうしても、嫌だったんだ。珊瑚ちゃんのーーー好きな人の前で、女の子のドレスを着るのは」

「えっ……」