「リディ、そんなに嫌なのか?」
お父様が優しく尋ねてくださる。どうにかこの気持ちを分かってもらいたくて、例の夢設定でこじつけることにした。
「以前、女神様の声を聞いたきっかけとなったのは、クリストファー殿下に初めてお会いした時のことでした。それに、例の夢を見た時、私は殿下の婚約者として暮らしていたのです。夢の中では、殿下には別の想う方が出来てしまって、私は嫉妬に狂い、挙げ句の果てに魔王に──!」
「まぁ! 婚約者になることも予知してたんじゃない!」
お母様、喜ぶところじゃない!
「ふむ。では殿下が他の令嬢に見向きもしないくらいに、お前が夢中にさせれば良い」
「え?」
お父様、すごいお母様みたいなこと言ってますよ?
「そうよー! ちょっとお転婆だけど、リディはとっても良い子だし、見た目はすっごく可愛いんだから、自信もって」
「あの、だから、魔王が……」
「その夢は現実にならぬよう、聖騎士団が調査しているところだ。安心してくれ」
「……はい」
つまりは公爵家にとっても、この縁談は誉となるのだ。娘のちょっとした不安は気のせいにしたいらしい。
王宮に着くと、クリストファー殿下が早速私たちを出迎えてくださった。婚約に相応しいきっちりとしたスーツ姿は、まさに王子様。かっこよすぎて逆に腹が立ちますわ。
「ようこそおいでくださいました。メイトランド公爵、公爵夫人」
「本日はお招きいただきありがとうございます、殿下」
「こちらこそ。王家の打診に良き返事をくださり、感謝します……リディア嬢、今日も美しいね」
「は、はぁ。あ、ありがとうございます……」
にっこりといつも通り甘く微笑んでくださるが、その笑顔が怖い。私があんなに暴れ回ったのをしっかり見ていたはずなのに、どうしてそんなにいつも通りなの!?
馬車を降り国王陛下と王妃様の元へ向かうのだが、何故かピッタリと殿下が私の横につき、エスコートしてくださった。てっきり嫌われたと思っていたので、私の頭の中は混乱状態だ。
玉座に座る国王陛下に謁見すると、陛下はまず私にお声がけくださった。
「リディア」
「はい」
「先日は、公爵領で魔物を倒したと聞いた。その後は聖石を使い人々の怪我を癒したと。我が国民を守ってくれたこと、礼を言う」
「そのお言葉をいただけましただけで幸せですわ」
ですから家に帰してください……なんて言えるはずもない。
国王陛下はそのまま続ける。
「女神の声を聞く、聖女リディアよ」
「!?」
「我が息子、クリストファーと添い遂げてもらいたい。良いだろうか」
「あ、あの」
私のこと聖女って言いました? 本当の聖女はそろそろ現れる予定なんですけど……。女神の声設定は嘘なんですー! 何で知ってるの!?
「リディア! 返事をせんか!」
陛下のお言葉に混乱していると、お父様が返事を催促してきた。お母様から感じる無言の圧力もすごい。
クリストファー殿下をチラリと見ると、バッチリ目があった。そしてニッコリと頷く。
い、いいんですね!? お転婆悪令嬢ですわよ!? 後でヒロインのことを好きになって、婚約破棄を言い出すかもしれないくせに! あぁ、もう!
「……は、はい。承知いたしました」
「ありがとう。末永くよろしく頼む」
こうして私はシナリオ通り、我が国の第一王子クリストファー殿下の婚約者になってしまったのだった。
お父様が優しく尋ねてくださる。どうにかこの気持ちを分かってもらいたくて、例の夢設定でこじつけることにした。
「以前、女神様の声を聞いたきっかけとなったのは、クリストファー殿下に初めてお会いした時のことでした。それに、例の夢を見た時、私は殿下の婚約者として暮らしていたのです。夢の中では、殿下には別の想う方が出来てしまって、私は嫉妬に狂い、挙げ句の果てに魔王に──!」
「まぁ! 婚約者になることも予知してたんじゃない!」
お母様、喜ぶところじゃない!
「ふむ。では殿下が他の令嬢に見向きもしないくらいに、お前が夢中にさせれば良い」
「え?」
お父様、すごいお母様みたいなこと言ってますよ?
「そうよー! ちょっとお転婆だけど、リディはとっても良い子だし、見た目はすっごく可愛いんだから、自信もって」
「あの、だから、魔王が……」
「その夢は現実にならぬよう、聖騎士団が調査しているところだ。安心してくれ」
「……はい」
つまりは公爵家にとっても、この縁談は誉となるのだ。娘のちょっとした不安は気のせいにしたいらしい。
王宮に着くと、クリストファー殿下が早速私たちを出迎えてくださった。婚約に相応しいきっちりとしたスーツ姿は、まさに王子様。かっこよすぎて逆に腹が立ちますわ。
「ようこそおいでくださいました。メイトランド公爵、公爵夫人」
「本日はお招きいただきありがとうございます、殿下」
「こちらこそ。王家の打診に良き返事をくださり、感謝します……リディア嬢、今日も美しいね」
「は、はぁ。あ、ありがとうございます……」
にっこりといつも通り甘く微笑んでくださるが、その笑顔が怖い。私があんなに暴れ回ったのをしっかり見ていたはずなのに、どうしてそんなにいつも通りなの!?
馬車を降り国王陛下と王妃様の元へ向かうのだが、何故かピッタリと殿下が私の横につき、エスコートしてくださった。てっきり嫌われたと思っていたので、私の頭の中は混乱状態だ。
玉座に座る国王陛下に謁見すると、陛下はまず私にお声がけくださった。
「リディア」
「はい」
「先日は、公爵領で魔物を倒したと聞いた。その後は聖石を使い人々の怪我を癒したと。我が国民を守ってくれたこと、礼を言う」
「そのお言葉をいただけましただけで幸せですわ」
ですから家に帰してください……なんて言えるはずもない。
国王陛下はそのまま続ける。
「女神の声を聞く、聖女リディアよ」
「!?」
「我が息子、クリストファーと添い遂げてもらいたい。良いだろうか」
「あ、あの」
私のこと聖女って言いました? 本当の聖女はそろそろ現れる予定なんですけど……。女神の声設定は嘘なんですー! 何で知ってるの!?
「リディア! 返事をせんか!」
陛下のお言葉に混乱していると、お父様が返事を催促してきた。お母様から感じる無言の圧力もすごい。
クリストファー殿下をチラリと見ると、バッチリ目があった。そしてニッコリと頷く。
い、いいんですね!? お転婆悪令嬢ですわよ!? 後でヒロインのことを好きになって、婚約破棄を言い出すかもしれないくせに! あぁ、もう!
「……は、はい。承知いたしました」
「ありがとう。末永くよろしく頼む」
こうして私はシナリオ通り、我が国の第一王子クリストファー殿下の婚約者になってしまったのだった。



