魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

「この写真、もう少し右端にした方がいいかな?」

奈々がパソコンのマウスを動かしながら、画面に映る写真の1つを右にずらしてみせる。

「うーん、そうだね。その辺りがいいかも。大きさはどうする?」

瑠璃の問いかけに、今度は奈々が、うーんと考え込む。

「このくらいでどう?」
「あ、いいかも!そのバランスでいいと思う」

古谷から写真が上がってくると、青木は奈々と瑠璃に、まずは二人で自由にデザインしてみて、と言い、二人はあれこれ相談しながら手探りで作っていた。

最初、写真に写っているのが瑠璃であることに奈々は驚いていたが、じっくり見てから、とてもすてき!と言ってくれた。

既存のパンフレットや他のホテルのものも参考にしながら、二人でああでもない、こうでもないと言いつつ作っていく作業はとてもおもしろく、瑠璃は定時になっても気づかないほど毎日熱中していた。

奈々のパソコンのスキルは素晴らしく、デザインのセンスもとてもいい。

瑠璃は、サクサクと手早く作業する奈々をうらやましく、そして頼もしく思っていた。