魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

「いたた、足が…」
「大丈夫?少し休む?」

ホテルの館内を青木に案内してもらい、定時の17時になると二人は連れ立ってホテルをあとにした。

駅への連絡路を歩くにもパンプスの靴ずれが痛そうな奈々に、瑠璃は近くのコーヒーショップで休憩しようと声をかけた。

ドリンクを手に二人掛けのテーブルに着くと、奈々はホッとしたように息を吐いた。

「はあ、疲れた…」
「朝から入社式だったんでしょう?そのあとも館内あちこち歩いたし、初日で緊張したものね。今日はゆっくり休んでね」
「ありがとう。あの、私も瑠璃ちゃんって呼んでもいい?」
「え?ああ、もちろん。私も奈々ちゃんって呼んでもいいかしら?」
「うん!」

そして二人して、照れ笑いする。

「瑠璃ちゃんは、明日何時出勤なの?」
「私は明日、13時に来るように言われてるの。奈々ちゃん達は、新入社員のオリエンテーションが午前中にあるんでしょう?」
「そう。瑠璃ちゃんも新入社員だったら心強かったのになあ。でも、午後からは一緒だもんね。頑張ってくる!」
「うん、待ってるね」

そしてお互い連絡先を交換して、また明日ね!と手を振って別れた。

瑠璃は、新しい環境に緊張しつつも、新たな出会いになんだかワクワクしていた。