魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

瑠璃は、えっ!と驚いた。

(そんなに大ごとなのかしら?)

ソワソワしながら、エレベーターで22階へ上がる。

受付で古谷が招待状を見せると、ホテルのスタッフは、にこやかに席まで案内してくれた。

(うわ、ステージに近い)

きっと古谷が、最優秀賞で名前を呼ばれるからだろう。

周りのテーブルを見てみると、同じく受賞者らしい人達のグループがいくつかあった。

隣のテーブルは、小さな男の子とママ、そしてスーツ姿のパパという家族連れらしい。

(パパが受賞者なのかしら。ちょっと緊張しているみたい。男の子は無邪気に笑っててかわいいな)

そんなことを考えているうちに、やがてBGMの音量が絞られ、照明が少し落とされた。

ざわめきが消え、皆は正面に向き直る。

金屏風の後ろから、ホテルのスーツを着た爽やかな笑顔の男性が現れ、深々と一礼する。

そしてマイクの前に立ち、よく通る声で話し始めた。