「それよりさ、家族にはどうするよ?瑠璃もまだ話してないんだろう?なんて説明する?」
「ああ…それは」

気がかりなことを思い出し、また視線を落とす。

「でもよく考えてみたら、俺達何も言ってないよな?つき合ってるとか、結婚するとか、そんなこと言った覚えもないのに、勝手に周りが思い込んじゃって…」
「ええ。それは確かに」

じゃあさ、と和樹は前のめりになる。

「このまま何も言わなくていいんじゃない?結婚しませんとも、別れましたとも。だってそんな話、したことないんだから」
「そ、それは、そうかも…」

考えてみたら確かにそうだと納得する。

「じゃあこのまま、今まで通りってことで。あ、でも、おふくろの誘いがしつこくて嫌だったら知らせろよ。俺から言っておくから」
「ううん、そんなことない。私もおば様とのお出かけ、楽しいから」
「そっか。なら良かった」

二人は笑顔で頷き合った。

これまでは考えられなかったような、穏やかな空気が、二人を包み込んでいた。