魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

「ふーん……。じゃあさ、せーので一緒に言う?」
「え、ええっ?」
「お互いサラッと言おうよ、ね? いくよ」
「ちょ、ちょっと待って」
「せーの! どうかどうか……」

『ずっと一緒にいられますように』

重なった二人の声。

驚いてお互い見つめ合う。

「え、同じ……?」
「そうみたい……ですね」
「そんなこと、ある?」

照れてしまい、互いに視線を合わせられない。

やがて一生は、ふと顔を上げた。

「俺の願いごとも叶うんだよね?」
「そう言いましたね、私ったら」
「じゃあお願いしよう。瑠璃さん」
「はい」
「ずっと一緒にいてください」

真剣な眼差しで見つめる一生に、瑠璃は言葉を失う。

「返事は?」
「……はい」

恥ずかしそうにようやく頷いた瑠璃に、一生は心底嬉しそうな笑顔になった。

「これでお互い、願いが叶ったね」

瑠璃は顔を真っ赤にしたままうつむいている。

一生は、優しく「瑠璃」と呼びかけた。

「これからもずっとそばにいる。ずっと君を守っていく。そして必ず幸せにする。だから」

おずおずと顔を上げた瑠璃の瞳をとらえて、一生は真っ直ぐ瑠璃に告げた。

「結婚してください」

瑠璃の瞳から涙が溢れる。

「返事は?」

優しく顔をのぞき込む一生に、瑠璃は涙をこらえて頷いた。

「はい」

一生はホッとしたように微笑むと、スッとこぼれ落ちた瑠璃の涙を指先で拭う。

そのまま手のひらで瑠璃の頬を包み、ゆっくりと顔を寄せた。

目を閉じた瑠璃のまつ毛が、涙で濡れてかすかに震える。

一生は込み上げる愛しさのまま、瑠璃にそっと優しくキスをした。

幸せで胸がしびれ、心がじわりと温かくなる。

唇が離れると、頬を真っ赤に染める瑠璃に微笑み、両手で胸に抱きしめた。

「ずっとずっと一緒にいよう」

ささやいた一生の腕の中で、瑠璃が確かに頷いた。