魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

フレンチレストランのシェフが用意してくれた料理は、どれもとても美味しかった。

味わいながらも一生は、正面の瑠璃の笑顔に時々ぽーっと見惚れてしまう。

食事のあと、一生は冷蔵庫に入れてあったケーキを取り出し、紅茶を用意した瑠璃と一緒に戻ってソファに座る。

ケーキ皿のフタをそっと開けると、わあ!と瑠璃は目を輝かせた。

チョコレートのホールケーキに、キラキラ輝く白い飾り。

まるで雪が降り積もった夜の風景のようだ。

ケーキに細くて長いろうそくを立てると、火を灯す。

「一生さん、お願い事!」
「あ、ああ、うん」

吹き消す前に瑠璃にそう言われ、一生は慌てて目を閉じて心の中で呟く。

(どうかどうか…)