魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

ほどなくして戻って来た瑠璃は、手に真っ赤なバラの花束を抱えていた。

その姿に、一生はまたドキッとする。

「花瓶、失礼しますね」

そして瑠璃は、一生と早瀬の花瓶を手に、カウンターの奥に消えた。

パチンッと枝を切る音や、うーん、と考え込むような瑠璃の声が聞こえてくる。

やがて、うん!と納得したような様子の瑠璃が、花瓶を手に一生のデスクに戻って来た。

「メリークリスマス!」

赤いバラに緑のヒイラギ、そして白いコットンフラワーと、クリスマスらしい雰囲気の花を見て、一生はありがとうと礼を言う。

「あのツリーも、あなたが飾ってくださったのですよね?ありがとう。とても嬉しかった」

やっと素直にお礼が言えたことに、大人げもなくホッとする。

瑠璃はそんな一生に、輝くような笑顔を向けた。