魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

壁に両手をつき、一生は、はあ……と大きく息を吐く。

「早瀬。俺……、生きてるか?」
「んー、まあ、おそらく」
「びっくりした。心臓が止まったかと思った。あんな、いきなり……」

思い出した一生の顔が、再び赤くなる。

(しかも、かわいすぎだろ!? 反則だ、あんなの)

なんとか気持ちを落ち着かせようと、深呼吸をくり返す。

その時「あの……」と、少し開いた扉から、瑠璃が顔をのぞかせた。

「うわあ!!」

今度は早瀬も一緒に驚き、気づけば一生と二人で手を握り合っていた。

「す、すみません! ごめんなさい! 驚かせてしまって……」

赤ちゃんを抱いたまま、瑠璃はしきりに謝る。

「あ、いえいえ、そんな。大丈夫です。大丈夫ですとも」

二人はお互い飛び離れ、ようやく落ち着きを取り戻して瑠璃に向き合った。