魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

「酔っ払っても大丈夫。部屋はすぐそこですから」

前回、バーで酔いつぶれて部屋まで運んでもらったことを思い出した瑠璃は、一気に顔を赤らめた。

「あ、いや。ごめん、冗談です。それはノンアルコールカクテル」
「え、そうなのですね」
「ああ。だからどうぞ心置きなく」

ようやく瑠璃はグラスを持ち上げ、一生と乾杯する。

ひと口飲むと、美味しい!と目を輝かせた。

「それは良かった。ちなみに、そのカクテルの名前、分かりますか?」

え?と瑠璃は、もう一度グラスを見る。

フルーティーで飲みやすく、色もきれいだが、今まで飲んだことはないカクテルだった。

「あなたにビッタリの名前ですよ。パーティーで靴を置いて帰ったあなたにね」

いたずらっぽくそう言ってから、一生は瑠璃を正面から見つめた。

「シンデレラ」