魔法のいらないシンデレラ【書籍化】

「よー、お待たせ!」

和樹は、一生に手を挙げながら居酒屋の個室に入ってきた。

「悪いな。忙しいところ呼び出して」
「いや、全然。一生くんからの珍しいデートの誘いとあらば、いつでも飛んでくるさ」
「なんだよ、それ」

ははっと一生は笑って、早速和樹のグラスにビールを注いだ。

まずは久しぶりの再会に乾杯する。

「仕事の方はどうだ?順調なのは知ってるけど」
「そちらさんこそ、順調そうだな。って、聞きたいのはそんなことじゃないだろ?」

和樹が含み笑いをしながらそう言うと、一生は、意外そうな顔をした。

「知ってるのか?その…」
「ああ、もちろん。おふくろと瑠璃のことだろ?お前より詳しいと思うぞ」
「そうか、それなら話しやすい。その…和樹に確認しておきたかったんだ。瑠璃さんが、うちで働いてくれていること、本当にいいのか?」

一生は、ややためらいながらも真剣な顔で和樹を見る。