「2人とも一旦落ち着いてください! ほら、陽介さんが持ってきてくれたケーキ食べましょ!」
俺らはぴたっと動きを止め、静かに椅子に座った。真結さんはビニール袋からケーキを3つ出すと、
「フルーツタルト…!!」
と目を丸くして呟いた。
「ショートケーキが1つしかなくて。フルーツタルトとモンブランを代わりに買ってきました。もしかして、フルーツタルト、苦手…でした?」
「あ、いやいや、逆です。フルーツタルトすっごい好きなんです!」
「そうなんですか! なら良かったです」
そんな俺らの様子を見て叶汰はニヤリと笑って、
「ひゅーひゅー! いいカップルだな~」
と囃し立てた。
「もうお兄ちゃん! ほら! ケーキ食べよ!」
真結さんは耳を真っ赤にして、叶汰の背中をバシッと叩いた。
「ちょっそんな強く叩く必要はねーだろ? 相変わらず馬鹿力だな」
「バカにしてくるお兄ちゃんが悪いんでしょ?」
「バカにしてねーよ、褒めただけだしー」
「さっきの言い方は完全に馬鹿にしてましたー」
俺はくだらなすぎる兄弟喧嘩を笑いながら見ていた。
「落ち着いてください、兄弟喧嘩はやめましょ」
俺が笑いながらそう言ったものだから、
「何がおかしいんですか!」
「何がおかしいんだよ!」
と2人が声を揃えて言った。そして2人は声がハモったことに驚いて、目を見合わせて笑い出した。
なんだかんだ仲良しな2人は見ててほっこりする。俺の妹も生きていたら…なんて思ったところで考えるのを止めた。過去はもう取り戻せない。今は今を楽しもう。