お許しくださいと頭を下げられ、慌てながらすぐに頭を上げてくださいと伝える。 「依里様が懐の深い方でようございました」 「それと、坊ちゃま呼びはやめろ」 「さて、中に入りましょう。奥様と旦那様がお待ちでございます」 晴人さんの訴えは華麗にスルーされた。 幾つもの部屋の扉を通り過ぎて、一段と大きな両開きの扉に案内された。 「よく来たね、依里さん」