大きな門をくぐり、玄関の前に車を横付けする。 自分で車のドアを開けようとすると、燕尾服を着こなした白髪交じりのおじさまが慣れた様子で開けてくれた。 「あ、ありがとうございます…」 「いえ、お気になさらず。ようこそいらっしゃいました、若奥様」 「わ、若奥様…」 目尻に皺を寄せ、柔らかく微笑みながら予想外の呼ばれ方をされる。 「槇野(まきの)。依里を驚かせるな。徐々に慣らせてあげないと」 「失礼いたしました。あの坊ちゃまが結婚すると聞き、この槇野、少々浮かれてしまいました」