朝なけに

私に選べ、と言うけど。
私が選んだ服の半分くらいは却下された。
中さんは試着しないタイプの人みたいで、
選んだ服を中さんにあてがい見る。


「これ凄く似合ってます」


黒い無地のシャツ。


「ああ。悪くないな」


一時間もこうやって選んでいると、段々と中さんの趣味も分かって来る。


そうして、中さんの買い物は終わり、15万円近いその会計に横に居る私は呆然としまう。
カードで支払っているけど、中さんきっと凄くお金を持っているのだろう。
まあ、会社の社長みたいだし。


今さらだけど、凄く高スペックの男性に私は恋に落ちてしまったみたいだな。


「服を選んで貰った礼に、お前にも何か買ってやる」


ショップを出ると、沢山の服の入った大きな紙袋を持った中さんは立ち止まる。


「私にも服をって事ですか?」


「べつに服じゃなくていい。
お前の好きなもので」


それって、中さんが私に何かプレゼントをしてくれるって事?
お昼のピザや映画迄奢って貰って、もう十分過ぎるくらいして貰っているのだけど。


「…いいのですか?」


中さんに何か貰えるなんて、そんな夢みたいな事があるなんて。
だから、断れない。


「ああ。
お前に何か買ってやりたいと思った」


その言葉だけで本当に十分なくらい嬉しいな。


「じゃあ、あのお店…」


同じフロアにある、アクセサリーショップを指差す。
ぼんやりと知っている、そのブランド。