朝なけに

「そういえば、葵衣あれどうなったの?
あの時のバーの代金払うとかで、キャバクラで働くような事を照さんと言っていたでしょ?」


照さんの名前を口にしながら、萌香の目がキラキラとしているのが分かる。
きっと、照さんは萌香のタイプなのだろう。


「うん。千里さんのキャバクラで働いているよ。
で、中さんの五番目の女にして貰えた」


そう言うと、目の前の萌香が少し驚いたように瞬きしている。


「え、葵衣、あの中さんって人に遊ばれてるの?
え?ヤッたの?」


「ううん。中さんは真面目な人みたいで、そんな事はなくて。
キスはしたけど、一緒に眠っただけで…。
実は、今夜も会う約束していて」


中さんの話になると、自分でも分かるくらいに顔がニヤけてしまう。
そんな私とは違い、萌香は仏頂面。


「…私思うんだけど、中さんって人ヤバそうだし、近付かない方がいいと思うよ?」


「まあ。半グレグループのリーダーだもんね」


中さんはヤバい人なのだろうけど、優しい。
あのバーでも助けて貰ったし。


「あのバーのお金も、本当は払わなくてもいいんでしょ?
キャバクラも辞めて、もうあの中さんって人に関わるの辞めなよ!」


「え、でも」


「あの中さんって人もそうだけど、千里さんって人もヤバイってか、普通じゃなさそうだし」


「あ、そうそう!千里さん、実はいい人だよ。
あんな怖そうな顔しているのにね」


千里さんのお店で働くようになって、千里さんとは顔を合わせているが、
相変わらず見た目はヤクザみたいだけど、良い人なんだろうな、と分かる。


「ふーん。あっそ」

そう萌香は不機嫌。
時々、萌香はこうやって機嫌が悪くなる。
まあ、忠告を聞かない私が悪いのかもしれないけど。