オレンジジュースはすぐに目の前に置かれた。
グラスの縁に切ったオレンジの輪切りが挟まって、美味しそう。
「あの、お二人は元々の知り合いとかなのですか?」
なんとなく、お店の人とお客さんというよりも、もっと親密そうだから。
そう思いオレンジジュースを一口飲む。
美味しいけど、今日1日でかなりオレンジジュースを飲んだので、いまいち進まない。
「俺は、中君のお兄さんの仕事上の部下だったんだよ。
それで、中君うちの店によく来てくれるようになったのかな」
「中さん、お兄さんいるんですか?」
修司さんの言葉に反応してしまう。
私は中さんの事を、まだ殆ど知らない。
「居るんじゃなく、居たんだよ」
「え、それってどういう意味…」
中さんの言葉にそう返した途中で、もしかしたら余計な事を聞いたかな?と思う。
中さんの口調だけじゃなく、目の前の修司さんの表情も重いから。
「俺の兄ちゃんは、ヤクザだったんだよ」
「ヤクザ…」
ヤクザという言葉に戸惑いながらも、話を促すように反芻してしまう。
「聖王会って暴力団で」
「せいおうかい…」
聖王会…、何処かで聞いたことあるような?
ニュース番組とかで、知らずに耳にしたのかな。
あ、そう言えば。
「何年か前に、そこの会長が殺されてましたよね」
四年くらい前だったかな?
ホテルの一室で、聖王会の会長が銃殺された。



